田中マンは、とある自治体で働く公務員。朝はきっちり目が覚めるけれど、服装にはあまりこだわらないタイプだ。
というのも、職場では制服に着替える決まりがある。
「だったら、出勤時の服なんて何でもよくない?」
それが彼の持論である。
この日の田中マンは、ジーパンにTシャツ、その上からパーカーを羽織って出勤。
もちろん職場に着いたら制服に着替えるのだが、その前に受付で上司に遭遇してしまった。
「田中くん、それはちょっと……服務規律に引っかかるよ」
――おっと、今日は“服装注意デー”だったか。
服務規律には「端正な服装を心がけること」と書かれている。
でも、「端正」って誰の判断?と田中マンは思っている。
「誰かにとって不快じゃなければ、それでよくない?」
「すみません、じゃあ明日からは“襟付きTシャツ”にします」
そう笑って返す田中マン。適当だけど、なぜか怒れない空気がある。
そして金曜日。
田中マンはアイロンのかかった白シャツにチノパンで出勤した。
「おや、今日はちゃんとしてるんですね?」
ミナミくんが不思議そうに声をかける。
「うん。来週、職場に“服装コード投票箱”を設置しようと思ってさ。
“出勤時の服装、どこまでOK?”っていうアンケート形式のやつ」
――田中マン、また何か始めたらしい。
その投票箱には、こんなメッセージが添えられていた。
「ネクタイより、にこやかな顔が大事だと思うんです。by 田中マン」
そして一週間後、投票の結果は――
「TシャツOK。ただし「部屋着じゃない感」が必要です。」が最多票を獲得。
こうして、じわじわと“田中マンルール”が職場に浸透しはじめていた。
💡あとがき
「公務員だからこそ、身だしなみにも厳しくあるべき」という声もあるけれど、
「働く環境をちょっと柔らかくする工夫」が、意外と空気を変えてくれるもの。
次回は、そんな田中マンが次に目をつけた“ちょっとした違和感”に迫ります。
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